
試乗したのは2/22(土)で、天候は晴れ。ブランシュにしては暖かかったのですが、雪が緩むほどではありません。コースの雪はやや柔らか目ながら、大きく荒れることもなく、良好なコンディションで試乗ができました。
まずはPERFORMANCEラインのi.SUPERSHAPEシリーズから。
来シーズンのモデルは、ラディウスやスリーサイズは今シーズンと同様ですが、トップシートが硬くなったのと、プレート(8点のビス止めのうち、ヒールピース下が固定、残りは半固定)が変わったことの2点が、主な変更点だそうです。
i.SUPERSHAPE SPEED
L170/R14.3/119-66-98

今シーズンのモデルと比べると、全体的な印象として、しなやかさより、しっかり感があります。テールがやや強いでしょうか。
10%のトップロッカーは変わってませんので、ニュートラルから谷回りに入るところで、ニュルッと雪を捉えてターンインするところは相変わらずですが、低〜中速では舵取りでやや張りを感じます。スピードを上げると、気持ちよく走ってくれました。
エッジホールドはやや強めですが、がっちりと食ったら離さないという感じではありません。エッジングの調整は容易ですから、扱いやすいです。
ターン外側へのズレを意識した滑りでも、特に問題はありません。
大〜小までターン弧を選びませんが、ある程度スピードを出す方に向いていると思います。
また特に難しいスキーではありませんが、今シーズンのモデルを基準に考えたときには、難しさを感じる方がいらっしゃるかもしれません。
あくまでも個人的な好みですが、もう少しだけしなやかさがあってもいいかなと思います。ま、ハイパフォーマンスモデルという位置付けなんでしょうけど。
i.SUPERSHAPE MAGNUM
L170/R13.1/128-72-106

第一印象は、扱いやすいスキー。SPEEDのような張りの強さは感じません。低速でも安心して操作ができます。高速になっても不安定になることはありませんが、走りはイマイチです。
一昨年までのモデルのような、切り換え時のもっさり感はありませんので、大〜小まで難しさを感じることはないでしょう。また、板のたわみが感じやすいので、雪面との力のやりとりもしやすいと思います。
技術レベルや志向にもよりますが、よっぽどマニアックな方でない限り、オールラウンド性が高いのはSPEEDよりMAGNUMだと思います。しかし、楽しさを感じるかどうかと言えば....、これは滑り手次第ですね。
i.SUPERSHAPE RALLY
L170/R13.6/131-76-109

最初のターンで感じたのは、切り換え時の自分の感覚とのタイムラグ。ニュートラルから谷回りに入るところで、スキーがちょっとだけ真っ直ぐ走るような感覚がありました。センター幅の広さとフレックス、トーションのバランスによるものでしょうか。今シーズンのモデルでも同様の印象があったように記憶しています。
全体的には、内傾角をとってカービング系で滑ったときは、極端な強さを感じることもなく扱いやすいのですが、大きめのズレを意識したときに、少しテール側の強さを感じました。
高速の大回りでは、トップがやや食い気味ですが、内に入りたがるほどではありません。逃がすことも容易ですから問題にはならないでしょう。
小回りも、自分でスキーを動かすことができる方なら大丈夫だと思います。
i.SUPERSHAPE TITAN
L170/R14.3/133-80-111

i.SUPERSHAPE最後の1本ですが、一番とらえどころのなかった板です(^^;
もちろん、ごく普通に滑ることができ、決して滑りにくい板ではありません。
強いて言えば、センター付近が食いながら滑走する感じでしょうか。ズレを意識して滑ったときにも、センター〜テールがやや強く雪を捉えますので、少し気を遣いました。
高速の大回りでは、RALLYで感じたようなトップの食いつきは感じません。
試しに前後の荷重ポイントを動かしながら滑ってみたところ、ちょっとだけ前寄り(イメージとしては拇指球の下あたり)に荷重すると、比較的良いフィーリングが得られました。板の抜けが良くなり、走りが出ます。
i.SUPERSHAPEの試乗が終り、次の板を物色していると、白い板が転がってます。
「これは?」
『一応レーシングとなってますが、基礎でも十分使えます。』
「キャンバー?」
『そ。』
WC REBELS i.GSX
L170/R14.6/116-68-100

滑り出した瞬間、思わず笑っちゃいました。いやぁ、いいですよ〜、これ!
切り換え後の雪の捉えは、“ニュルッ”じゃなくて“ピシッ”って感じ。もちろん、そのまま食いっぱなしなんてことはなく、エッジングを強めていくことも、少し緩めてコントロールされたズレを引き出すことも、自在です。
キャンバー時代のi.SUPERSHAPE SPEEDの進化版みたいなフィーリングです。
いつでもスキーのレングスをいっぱいに使っているという安心感も、私のような古いスキーヤーには嬉しいところ。
安定性も申し分ありませんし、今回は試せなかったものの硬い斜面でも力を発揮しそうです。
大回りから小回りまで、またカービングからスキッディングまで、これぞ真のオールラウンドモデルと言ってもいいかもしれません。
ただし対象レベルは最低でも1級以上でしょうか。
2級レベルの方はMAGNUMからステップアップしてね。
そして色気のないデザインは....。まぁHEADですから。いいんじゃないでしょうか(^^;
WC REBELS i.SLX
L165/R11.4/121-66-106

「i.GSXがあるんなら、i.SLXってのもあるの?」
『あります。』
「え、ホントにあるんだ。」
『以前、i.SUPERSHAPEだけの名前の赤いやつあったでしょ。あんな感じです。』
乗ってみると、確かにおっしゃる通り。
ラディウスの数字は小さいのですが、それを感じさせません。ターン弧は大〜小までOK。もちろん内傾角を深くとると、トップから内に入ってきますが、普通に滑っていれば、勝手にグイグイと入ってくることはありません。エッジングの調整は難しくありませんので、ほとんどの状況に対応できるのではないでしょうか。ハイスピードの大回りだけは、ちょっと気を遣いますが....、できない訳じゃありません。
素晴らしいショート系のオールラウンドモデルです。
やっぱりHEADはキャンバーだね!
遅いランチを終えて戻ったのが14時半。時間的に最後の試乗です。
i.SUPERSAPEの中に、ポツンと見慣れないデザインの板が。
「これって、何?」
『あ、レディース。でも、シニアにも売っていこうかと思ってます。』
“シニア”と言われると反応する歳になってきました(^^;
「試していい?」
『レディースのつもりだったんで、短いのしか持ってきてませんけど。』
「いくつ?」
『53。一応設定は70まであるんですけどねぇ。』
「まぁ、物は試しで。」
SUPER JOY
L153/R10.9/127-74-107

持った時の重さも、乗り味も大変軽いのですが、エッジホールドは意外なほどしっかりとしています。
板の挙動が分かりやすいので、扱いやすいですが、硬い雪だと、ややキョロつくところもあります。しかし、あの長さじゃ仕方ないでしょう。
そこそこのスピードを出しても安定していますし、操作性も大変良いので、メーカーの意図通り、女性やシニアにはピッタリの板だと思います。
デザインも落ち着いていていいのですが、洗剤みたいなネーミングは、何とかならんかったのかねぇ。
以上7本の試乗でした。
今回特に印象的だったのが、i.GSXとi.SLX。それぞれ、ミドル〜ロング系、ショート系の素晴らしいオールラウンド性能を、キャンバースキーで実現してくれました。
最近は、
ロッカースキー=新しいスキー
新しいスキー=進化したスキー
進化したスキー=良いスキー
と考える方も多いようです。ま、これはいいとして....。
キャンバースキー=古いスキー
古いスキー=進化していないスキー
進化していないスキー=あまり良くないスキー
と考え、
ロッカースキー>キャンバースキー
と結論付ける方もいらっしゃいます。これはちょっとね....。
ここ数年でロッカースキーが増えているのは事実ですが、どちらが『良い』ということではなく、それぞれに『特徴』や『個性』があると思うのです。
その特徴や個性が、自分自身に合うか合わないかは、試してみないとわかりません。
ぜひ構造にこだわることなく(そして酔っ払いのインプレッションに惑わされることなく)、実際に試乗をして、その時の自分の感覚を信じて、相棒を選択してください。
コンビニに並んでるお菓子だって、常に新製品が美味しい訳じゃないし、みんなが絶賛しているけどイマイチ口に合わなかったり、以前からある定番品の方が好きだなぁ、ってこと、ありませんか?
14-15試乗インプレッションから辿り着き、説得力のある経歴やコメントを拝読し質問させていただきたいと思いました。
あくまでskiholicさんの主観で結構です、アドバイスも含めていただけたら幸いです。
当方レース経験は無く、25年ほど前から技選の選手に魅せられ基礎系を楽しんできました。
カービングが主流になりはじめの頃に一級を取得し、テクに挑戦するも玉砕。
そのうち子供が生まれスキーどころではなくなり、ブランクができました。
そんな子供とも5年くらい前から一緒にスキーを楽しめるようになり、現在は年甲斐もなく(今年45歳を迎えます)あきらめていたテクの再挑戦をしたいと小さな火がゆらゆらとしています。
そんな思いもあり今シーズンは久々に板を購入。i.SLに振り回されることに快感を覚えながらも、試乗会でRDに乗った時にRDにしておけばターン弧ももっと狙いやすかったのかな??と少し後悔しながら次の板を狙っている今日この頃です。
そこで、来期はロング系の板を考えているのですが、いまいち自分の中でHEADのラインナップの整理がつきません。
i.SPEED SUPERSHAPE SPEEDそしてi.GSX…
自身のタイプ的には決して大回り命!ではないことと、絶対的なスピードを求めているわけではないこと、そこそこのスピードに中での安定感と操作性を重視したいというニーズです。
先日i.SPEED185cmとSUPERSHAPE170cmの試乗をしてみましたが、前者は少々オーバースペックな気もしますが、サイズを短くし、慣れたら頼もしい板なのかな?とも思います。
試乗会でのコンディションも悪くあまりハイスピードで飛ばしてみたわけでもありませんが、後者はまったくクセのないむしろ子供と一日楽しく滑る板としたら即購入かな?という好印象の板でした。
問題は試乗できていないもう一台のi.GSX。
位置づけとしたらどう解釈したらよいのでしょうか?
この先5年くらいは乗るつもりで汎用性も考慮して175cmくらいでとも思っています。
トップの微量のロッカー形状やKERS搭載の有無…
違いは大きなものなのでしょうか??
そういえば先日の技選最終日、不整地小回りでは関塚選手がi.SLXをチョイスしてましたが、そういった意味では扱いやすいのでしょうかネ…
なにかヒントになるようなコメントをいただけたら嬉しいのですが…
重ね重ね唐突な書き込みをご容赦ください。
そしてくどいようですが、あくまでskiholicさんの主観によるもので結構です。宜しくお願いします。
長々と申し訳ありません。
飛騨高山人 Mush♂でした。
コメントありがとうございます。
スキーへの情熱が再燃されたとのこと、素晴らしいですね。
お子様にも、ぜひスキーの楽しさを伝えてあげてください。
さて、ご質問のHEADスキーの件について、分かる範囲でお答えいたします。
まず、ラインアップですが、i.Supershapeシリーズは一般ゲレンデの使用を前提とした中上級モデルです。
2012-13(昨シーズン)モデルまではキャンバーでしたが、2013-14(今シーズン)モデルより10%のトップロッカーに変わり、2014-15(来シーズン)モデルも同様です。
メーカーとしては、RACINGや(i.Supershapeのような)HIGH PERFORMANCEラインではキャンバーが適していると判断しつつも、他社の動向やマーケットでの需要等を考え、i.Supershapeをロッカーに変更したようです。(あくまで私の推測です。)
一般的にはロッカー形状にすることにより、ターンインがスムーズになるという特徴がありますが、HEADの場合は元々操作性が良かったので、私自身その必要性は感じていませんでした。とは言え、これにより対応する技術レベルがやや広がったことは事実でしょう。(それが良いかどうかは別にして。)
しかし、接雪点がブーツ寄りにあることでターンインは楽になりますが、ターン中にスキーのレングスをフルに使って滑るためには、しっかりと荷重してスキーを撓ませ続けることが必要です。これができないと、ターンを切り換えても、スキーが真っ直ぐ走ったり、ズレたりしてしまいます。つまり、ロッカースキーであっても、対応する技術は必要なのです。
逆に言えば、然るべき技術を持っている方であれば、キャンバー形状の方が常にスキーのレングスをフルに使えるのですから、より良いと考えることもできるのではないでしょうか。
そんな意図で2014-15(来シーズン)に登場するのが、iGSXではないかと私は考えています。試乗インプレッションで「キャンバー時代のi.SUPERSHAPE SPEEDの進化版」と書いたのは、そういう意味です。
ただし、SPEEDとi.GSXではロッカーかキャンバーかという違いだけでなく、フレックスやトーションも調整されているでしょうから、あとは乗ったときのフィーリングが、どちらが合うかだと思います。
同じく試乗インプレッションで「切り換え後の雪の捉えは、“ニュルッ”じゃなくて“ピシッ”って感じ」と表現したのは、i.GSXの方がトップで雪を捉える感覚が分かりやすく、なおかつ私にとっては好印象だったことによります。もちろんSPEEDの感覚に好印象を受ける方も沢山いらっしゃると思いますし、それを否定するつもりは全くありません。
長々と書きましたが、結局はロッカーかキャンバーかで判断できるものではなく、実際に乗ったときのフィーリングが自身に合うか合わないかだと思います。
HEADであれば、私はキャンバーの方が好きです。また、FISCHERのRC4 SUPERIOR RACETRACKもキャンバー形状で素晴らしい乗り味を体感しました。(試乗インプレッションは、 http://skiholic.sblo.jp/article/54942202.html と http://skiholic.sblo.jp/article/64022145.html にあります。)
OGASAKAのTCシリーズの中回りモデルなどは、ロッカーになって扱いやすくなりました。しかしターン全般を考えると、まだ手強いスキーですが。(試乗インプレッションは、 http://skiholic.sblo.jp/article/54287048.html と http://skiholic.sblo.jp/article/63249603.html にあります。)
これからも各地で試乗会が開催されますので、ぜひ実際に試して、ご自身の感覚で判断されることをお勧めいたします。
参考にさせていただきます。
如何せん子育て世代、しかも父子家庭とあっては財源も限られ、悩んでしまいます。
本来どんなマテリアルをチョイスしようが、それを自分のモノとして対応していくことが技術というものなのだとも思いますが(笑)
今後もskiholicnoさんのいちファンとして『中毒者の徘徊』覗かせていただきますので宜しくお願いします。
私も準、正指の道を目指してみようかな…
今までの冬場の投資回収のためにも(笑)